2023年1月25日 中外日報社 中外日誌より 




白衣観音見守る
写経会場に襖絵


臨済系単立林丘寺(京都市左京区)の写経会場・雲母(きらら)庵に仏絵師・藤野正観氏作による襖絵が納められた。
昨年12月に納められ、装いを新たに新年を迎えた。
 同寺は修学院離宮を造営した後水尾上皇の第8皇女、朱宮光子内親王(1634〜1727)が離宮内の御殿を賜り朱宮御所(音羽御所)としたことに始まる。
朱宮は1680年に上皇が没すると出家し、照山元瑤と号し、御所を門跡尼寺・林丘寺とした。
雲母庵は朱宮の隠居所として建てられ、かつては近代日本画家の速水御舟や三輪晃勢らの文人が一時的に居を構えたことがあり、御舟の「雲母坂」は同寺塀外の古道「雲母坂」を描いたものという。
18年前に全面改修され、2階を写経会場にした。
写経会は天野弘山門跡の発案で32年前に始まり、開山朱宮の月命日の6日に毎月開く。参加者は紹介に限定し、常時20人程度を維持し「サロン的」な趣で催す。
襖絵は写経会開催が30年の節目を迎えた2020年、仏教クラブで旧知の藤野氏に制作を依頼した。
襖絵は墨絵に淡彩色、金色は同寺にちなんで雲母(きら)を使って着色。玄関正面に林丘寺に見立てた蓮池でくつろぐ白衣観音、その右に求道の善財童子が描かれている。
建物内部は8面にわたり、仏法や慈悲の心を説く白衣観音に巡りあえた善財童子の姿を描き、時間が異なるシーンを絵の中で表現する手法・異時同図を用いた。
天野門跡は「門をくぐり建物に入ると仏さまの絵が広がり、仏さまに見守られながら半日写経してもらう。
構想を具現化していただいた。やさしい絵で尼寺に向いている」と感想を話した。
藤野氏は「憧れの画家が住んだ場所で描かせていただき名誉なこと」と喜ぶ‖写真。
写経会は秋以降、参加者を募り、完全予約制で開催する予定という。

写真は、襖絵に見入る藤野氏