京都新聞 2011年3月16日 朝刊より

平成の釈迦出現図披露 長岡京・長法寺が制作

京都府長岡京市長法寺谷田の長法寺がかつて所蔵していたとされる国宝の「絹本著色釈迦(ちゃくしょくしゃか)金棺出現図」をベースに描いた仏画「絹本著色平成釈迦金棺出現図」が完成し、このほど同寺の奉賛会の地元住民らに披露された。

 寺伝によると、織田信長の比叡山焼き打ちの際、山で寺務をしていた末寺の長法寺の僧が釈迦金棺出現図を持ち帰って秘蔵し、戦後、外部に譲り渡したという。現在は国宝指定を受け、京都国立博物館が所蔵する。

 出現図は、摩訶摩耶経(まかまやきょう)が説く釈迦再生説法の場面を描く。母の摩耶夫人が、涅槃(ねはん)の場に駆け付けると、釈迦が身を起こして世の無常を説いた様子を表現している。

 寺の歴史をくんだ新たな仏画の制作を、京都市西京区の仏絵師藤野正観さん(60)に依頼。国宝である平安時代の出現図を元にする一方、鎌倉時代以降の涅槃図の特徴でもある数多くの動物を新たに描き込むなど、藤野さんが、関係者の意向も聞きながらオリジナリティーを加え、3年がかりで色鮮やかな平成版の金棺出現図(縦1・7メートル、横1・6メートル)を仕上げた。

 このほど、本堂で開眼法要が行われ、関係者約80人が東日本大震災の被災者への黙とうをささげた後、完成したばかりの釈迦金棺出現図に手を合わせた。

 川西延隆住職(27)や奉賛会のメンバーは「寺の宝が帰ってきたようで、末永く大切にしたい」と話し、四半世紀以上にわたり仏画を描き続ける藤野さんも「依頼を受けて光栄。(自らの作品の中でも)最高峰の出来で、人生の集大成になった」と振り返った。

 寺では同図を19〜21日まで無料で特別公開する。午前9時〜午後4時。

完成した平成釈迦金棺出現図と川西住職(左)と
仏絵師の藤野さん(長岡京市長法寺谷田・長法寺)